「大人」になるため、挑まなければいけない謎。待望の〈古典部〉最新作!

累計205万部突破の〈古典部〉シリーズ最新作!
誰もが「大人」になるため、挑まなければいけない謎がある――『満願』『王とサーカス』の著者による、不動のベスト青春ミステリ!

神山市が主催する合唱祭の本番前、ソロパートを任されている千反田えるが行方不明になってしまった。
夏休み前のえるの様子、伊原摩耶花と福部里志の調査と証言、課題曲、ある人物がついた嘘――折木奉太郎が導き出し、ひとりで向かったえるの居場所は。そして、彼女の真意とは?(表題作)

時間は進む、わかっているはずなのに。
奉太郎、える、里志、摩耶花――〈古典部〉4人の過去と未来が明らかになる、瑞々しくもビターな全6篇
「KADOKAWA」より


読みました。

古典部シリーズ最新作です。実に6年以上ぶりの新作です。
今作は短編6つが収録されています。

箱の中の欠落
鏡には映らない
連峰は晴れているか
わたしたちの伝説の一冊
長い休日
いまさら翼といわれても

の6つです。簡単にそれぞれの感想とまとめの感想を。以下ネタバレにご注意ください。

1.箱の中の欠落
 お話としては、生徒会選挙で票の数がおかしい、不正があった、どうやった?というお話です。まず明らかに犯人がいるお話なのですが、その犯人当てや動機当てをせず、どうやったかということだけを解き明かすというのが少し珍しく感じました。
 話の進行は、奉太郎と里志で行われます。ミステリー的な部分はおいておいて、この奉太郎と里志が夜に2人で散歩をしながら話を展開するのですが、その様子がとてもいい!そもそも私が古典部シリーズが好きなところはミステリー部分よりもメイン4人の個性や関係性が好きという部分が大きいので、ほとんどの話でそういうところに目がいってしまいます。この話の、奉太郎と里志も、相変わらずとても良い距離感で、近すぎず、離れすぎずで。喧嘩しあって認め合うというような若々しい男の友情もいいけれど、この2人のような、言わずともお互いの思考と領分を分かり合っていて、高校2年生にしては少し大人びても見えるけれど、クールでおしゃれな関係もかっこいい。この2人の会話ももっと聴きたい。

2.鏡には映らない
 こちらは奉太郎の中学生時代の卒業制作でのお話。語り部が摩耶花なのが少し新鮮です。
 何といってもこのお話で一番インパクトがあるのが、おそらくここまで古典部シリーズを読んできた人の9割が摩耶花と同じかそれ以上に驚いたであろう、奉太郎に中学時代彼女がいたという噂話。ただ実際ストーリー中明言はされていないので分かりませんが、彼女の話ぶりからすると付き合ってはいなさそう。いくつかよく分からなかったのが、彼女が奉太郎に会って話したら嫌いになると言ったこと、卒業制作がいつできるか尋ねられたときに奉太郎がアサミしだいだと言ったこと、それに対して突っ込まれたときに口をぱくぱくさせたこと、結局奉太郎が最初に一人で引き受けたときあてにした人は誰だったかなど。別の意味があると思って最後まで読んでもわからず、、最初と最後に顔を赤くしてたのは単純に恥ずかしいからではなく?やっぱりお付き合いしてたの?
 その他では、特別な事が起きたときに特別に張り切るのは、実は簡単なことだ。(p.75)。頭でなんとなく分かっていることを改まって文章にされるとそうだよねってすっきりする。そんな感じ。
 ・・・・・・さすがにちーちゃんの前で、折木の「彼女」の話は出せない。(p.91)。これ誰を気遣ったんでしょうね。素直に読めばえるを気遣ったように見えますが、そうなるとえるから奉太郎に多少なりとも気があるようなことを、少なくとも摩耶花はそう思ってることを認めることに。奉太郎を気遣ったのだとしたら?「彼女」を?そのうちの複数?えるか奉太郎が絡んでいるならどちらにせよにやにやできそうでした。
 あと摩耶花が里志と電話するシーンがあるのですが、初々しく女の子らしくしてる摩耶花がとてもかわいいです。

3.連峰は晴れているか
 このお話だけは、今回収録されたものの中で唯一すでにアニメ化されているので内容はわかっていました。
 コピー代は一枚十円だったろうと思い、財布から十円を渡す。千反田は何も言わずに受け取った。(p.130-131)ともすれば十円くらい別にいいと言ってしまいそうになるであろうところですが、何も言わずに受け取れるのはえるの人となりと2人の関係が見えたようでとても良かったです。
 最後のシーンでえるは奉太郎の「気をつける」といったことに対して、うまく言葉にできないのですが、簡単な言葉で表現しなかったことで感銘の大きさがうかがえますし、あまり自分のことを話したりしたがらない奉太郎の内面を少しうかがい知れたことへの嬉しさみたいなものも見えました。
 今作の奉えるのいちゃいちゃその1。

4.わたしたちの伝説の一冊
 4つ目の話は摩耶花の所属する漫研での話。3年生が引退していよいよギスギスが頂点に達し、内部分裂が始まってしまいます。その中で摩耶花が、何のために漫画が描きたいのか、将来どうしたいのかを考えます。語り部はまた摩耶花。
 まずびっくりするのが、冒頭にある奉太郎の読書感想文。その話題になったときこちらまで気になったところでちゃんと載せてくれたので摩耶花ナイス。読んでみたらやっぱり普通じゃなかった。こんな感想文書ける中学生そんなにいないし、こういうような見方を絶対にできない自分もいやになるほど。
 話の途中の摩耶花の立ち位置が痛々しくてちょっと辛い気持ちになります。でもまたしても里志とのやり取りがかわいい。里志が普段はデータベースは結論を出せないなどと嘯いているのに、摩耶花の困り事に対しては心底がんばって考えている姿がかわいすぎる。
 それにしても漫画家を目指すと決めた少女の話を最近別にも見たような。

5.長い休日
 今作奉えるいちゃいちゃエピソードその2。奉太郎の調子が珍しく良いばかりに、散歩に出かけた先(十文字かほさんの神社)で出会ったえると掃除のお手伝いをしながら、奉太郎のモットーである「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいいことなら手短に。」のルーツのお話。
 とりあえず色々とにやにやポイントがあるのですが、まずえるとかほさんと奉太郎で生き雛祭りのときの写真を見ているとき。かほさんがえるのひどい写真を奉太郎に見せようとしたときにそれはだめです!ととめるえる。かわいい。
 奉太郎が無意識に掃除しながら鼻歌を歌っていることをえるにご機嫌ですねと指摘され、動揺してるのにそうでもないと応え、口許に手を当てて二、三度肩を震わせて笑ってるの、二人ともかわいすぎる。
 そして最後の奉太郎のお姉さんの言葉。その誰かは誰なのかなー!
 3つ目のエピソードである連峰は晴れているかで最後に上手く言えなかったえるがありがとうございます、嬉しいですと。連峰は晴れているかと同様に奉太郎の内面に触れることができたことが嬉しかったのだと受け取りたいです。

6.いまさら翼といわれても
 最後に表題作です。内容は上にあるので省略。
 主に遠回りする雛で描かれたえるの育ってきた環境と将来の展望。それを受け入れ、将来がそうあるものだと思っていた矢先に、お前は自由だと言われたら。ここに詳しく書くことはできませんが、このお話が自分には一番重なるところがあり、色々考えたくなってしまうような話でした。最後どうなったのか、これから先えるはどのような道を歩むのか、まだまだ気になることを残してくださったお話でした。


 全体を通してみると、短編でどれも読みやすくはあれど内容はしっかりしていて終始楽しい作品でした。「青春は、やさしいだけじゃない。痛い、だけじゃない。ほろ苦い青春群劇―――。」というキャッチコピーがありましたが、表題作をはじめビターなお話も多かったです。2年生となり将来のことを考え始めた面々が1年生のころより少しずつ大人になっていく様子が瑞々しいです。丁寧な描写でアニメーション化されたときの映像で全て脳内再生されるので、ふたりの距離の概算とともに是非是非2期を作ってほしい!もちろん、原作もどんどん続きを読みたい!また6年も待てない!

 お話とあまり関係ないですが、6つの短編内で奉太郎、たくさん料理を披露しています。婿入り修行かなー?

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